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平成28年 第13回 長野県建築文化賞
審査結果

【審査員】
委員長 中村 好文氏(レミングハウス)
委 員 関 邦則氏(長野県建築士会名誉会長・(有)関建築とまち研究室)
委 員 場々 洋介氏(長野県建築士会長・(株)フジ設計)

このたび、長野県建築文化賞の審査委員長として、一次審査、二次審査の大役をつとめさせていただいた。今回、応募作品は一般部門14点、住宅部門26点、リノベーション部門5点だったが、この中から昨年11月11日の一次審査で現地審査に残った作品は、一般部門4点、住宅部門6点、リノベーション部門2点の合計12点。
年が明けて1月27日~28日の2日間にわたって、長野県各地に点在する力作ぞろいの12作品を審査して回ったが、この現地審査ツアーは住宅設計を主たる仕事としている私にとって非常に刺激的かつ有意義な経験になった。
現地審査が進むにつれて私が感じたのは、審査の対象になった建物の用途が、市庁舎、研究所、多目的施設、保育園、住宅、別荘と多岐にわたり、規模も予算もピンからキリまである建物をひとつの土俵に乗せて審査することの難しさである。
二次審査に残った作品はそれぞれに揺るぎないコンセプトがあり、建築計画的にも破綻がない秀作ぞろいなので、なおさらのこと。つまり、なにか自分なりのはっきりした審査基準がなければ作品に優劣のつけようがないと感じたのである。
「歌心」という言葉があり、仮に楽譜どおりに唄えても、そこに「歌心」がなければ人を感動させることができないように、私は建築にも「建築心」がなければならないと考えている。
今回の審査で、私は候補作品に「建築心」が感じられるかどうかを審査基準のひとつにした。別の言い方をすると、理性ではなく感性に直接的に訴えかけてくる作品を高く評価したいと考えたのである。一般部門・最優秀賞の「HIOKIイノベーションセンター」、住宅部門・最優秀賞の「飯綱山荘」に上質で柔和な「建築心」を感じることができたことが、大きな収穫だった。
(審査員長 中村好文)

一般部門
最優秀賞(知事賞)
HIOKIイノベーションセンター
亀井忠夫・五十君興・山本明広・黒澤清高

【所在地 上田市】
「イノベーションを起こさせるには何が大切か」という設問に「建築で応えさせよう」と考えた会社がエライ…建物に足を踏み入れ、設計者から設計に関する丁寧な説明を聴くうちに私の脳裡に浮かんだのはこのことだった。次に設計者選びに目の狂いがなかったこともエライと思った。つまりプログラムの勝利ということになるだろう。もちろん建築的にも見どころ満載である。自然採光に有効なノコギリ屋根を採用したこと、そのノコギリの斜面に、斜めの日射角度の必要なソーラーパネルを設置した「一石二鳥」の解決方法などに、思わず相好を崩してしまった。
(中村好文)
優秀賞
安曇野市庁舎
内藤 廣・小川原吉宏・尾日向辰文

【所在地 安曇野市】
プロポーザルの段階から注目を集めていた建築なので、完成までの経過については多くの方が知っておられるのではないかと思う。平面計画においてはプロトタイプ的な庁舎建で、プレキャストコンクリート工法と合致している。そうしたテクニカルな合理性だけの建築にとどまらず、階段周りや議場は建築的な魅力を十分に感じさせる。多用した木材や外観デザイン等を見ていると、使い勝手やコストなどに対する明朗さを尽くさなければならない最近の公共建築におけるポピュリズム的な要求に対して「建築」を求めつつ苦闘している設計者の姿が目に浮かぶ。
(関 邦則)
奨励賞
藪原宿にぎわい広場 笑ん館
寺内美紀子・山田健一郎

【所在地 木曽郡木祖村】
中山道の宿場町の街道に面して建つ公共建築となっている。設計にあたって最も悩むことは、歴史的な街並み(現状はともかくとして)との調和のあり様だと思うが、ここでの建築の姿や外部空間の配置などはモダンなセオリーによっている。伝統的な建築様式の再現ではつくり得ない現代の生活スタイルに合わせた魅力や刺激をつくり出し、その機能を果たしていることはよく伝わってくるが、歴史と現代のバランスや落としどころについて悩んできた者の稚拙な感想としては、「建築」自体が街の中の時間の蓄積と饒舌に語りあっていくことも期待したい。
(関 邦則)
奨励賞
ささべ認定こども園
青木一実・藤田大輔

【所在地 松本市】
0~2歳児の保育部門を新設した作品です。敷地は松本の住宅地に建ち、木造平屋の建物で、北側に細長い形の管理棟、また中央に正方形の保育棟が配置されている。一般的な保育室と違うのは、食べる、遊ぶ、寝る場所を緩やかに分けている点であると思います。東からの外観は住宅地のスケールを配慮した低いデザインで、北アルプスの背景が美しい。管理棟には2つの通路が平行して計画されている。微妙に2つの建物は軸をずらし配置されている。屋外には3つの庭ができて、今後の緑化が期待されます。深い庇のある保育棟のコーナーのデザインが美しく、少し浮いて設計されたデッキや傾斜のある芝生の丘も美しい作品でした。
(場々洋介)
住宅部門
最優秀賞(知事賞)
飯綱山荘
丸山和男

【所在地 長野市】
軒の深い簡素な切妻屋根の下に明快なプランをおさめた素晴らしく居心地の良さそうな山荘である。その居心地の良さの決め手はこの設計者ならではのスケール感とディテールに対するきめ細かな配慮、すなわち建築的なセンスの良さであろう。建築を歌わせる「歌心」が山荘のそこここに感じられ、「懐の深い大人の建築」の風格が外部にも内部にも漂っていた。ちょっとしたことだが、ストーブのあるラウンジピットに高窓をつけたあたりも秀逸。ただし、インナーデッキに行くために、このラウンジピットの脇をすり抜けなければならないところは少々疑問に思った。このことで、ピットの落ち着きが失われるように感じたのである。
(中村好文)
優秀賞
プラットフォームハウス
山田健一郎

【所在地 松本市】
恵まれた敷地条件に建つ平屋の大型住宅であった。家族にとって十分すぎるほどの広さやパノラマ風景を見ることにこだわった開口とバルコニーなどが相まってのネーミングということであろう。広い主要諸室に加えて、必要十分なバックスペースや裏動線をとっていることが、更なるゆとり感を感じさせる。細かいディメンジョンやディテールなどをあまり気にせず、スペースの問題として住みかをまとめたことが気負いを感じさせない魅力になっている。裏腹の印象としてやや大味であることも否めないが、誰しも住んでみたいと思わせてくれる住宅であった。
(関 邦則)
優秀賞
大町の家
百瀬 満・百瀬万里子

【所在地 大町市】
クライアントは信州が好きで、東京から移住された初老の女性です。塩の道に面した西下がりの敷地に「西側に広がる景色を眺めながらゆったり暮らせる家」を希望された。前面道路からは黒い建物の屋根しか見えません。北アルプスの雄大な自然が眺める高台に立地しています。ひとり暮らしの家の為、プランはシンプルです。ダイニング、リビング、和室からアルプスが眺められます。リビングの西側に半屋外デッキがあり、夏など木製網戸を閉めると、デッキもリビングと一体として使うことができるアイデアです。デッキの開放性と眺めが、この平屋の建物の特長であると思います。少し気になったのは、リビングの奥行きがないことや、高齢者の為、ダイニングが36センチもあがっている点、バリアフリーの方が良いのではと思いました。
(場々洋介)
奨励賞
小船山の家
緑川直彦・緑川淳子

【所在地 千曲市】
古い集落の中に建つとても小さな住宅で、両親の母家の庭先だった場所を使った変形形状の敷地にはめ込まれたように建っている。しかしその住宅は厳しい敷地条件に屈しない魅力的なものになっている。機能的な面などにおいて、ある程度は割り切りが必要なのだろうと思うが、狭小であるが故の建築的アイディアが散りばめられて、狭さを感じさせないし、むしろ合理的で、それなりにけっこう楽しい生活が送れるだろうと思う。物理的な狭さが生活スタイルを規定してしまう一面もあると思うが、この先の生活の中で知恵を絞って暮らしてほしいものである。
(関 邦則)
奨励賞
松原すきっぷ
尾日向辰文

【所在地 松本市】
敷地は松本市郊外の古い住宅団地にあり、北傾斜の角地という立地になっています。当然建物は北側によせ、南側に広い庭を配置させますが、北隣のお宅に対して、日影をできるだけつくらないよう低く抑え、駐車場の上にスキップフロアをつくり、そこが家族全員の書斎や勉強コーナーになっています。ここは家族共有のワークスペース。フィギュアの好きなご主人のコレクションと子供たちの勉強空間が一体化して微笑ましい。1階のダイニングからはスキップフロアや、2階の部屋などが見渡せる楽しい空間となっています。ここにある薪ストーブで家全体を暖めることができます。2階のブリッジは下が透けた格子状のものとなっており、この南側に洗濯を室内で乾かせるコーナーもあり、よくできていると思いました。
(場々洋介)
リノベーション部門
優秀賞
須坂の家(築120年の母屋改修)
小野暁彦

【所在地 須坂市】
蔵のまち須坂市に計画された離れ建て替えと母屋改修の作品です。住宅部門とリノベーション部門と、2つに分けて応募されましたが、審査員で相談の上リノベーション部門として審査しました。築120年の母屋の1階は、以前美容院であったものを祖母の寝室に改造している。また、新築部分は、渡り顎横法によるもので、桧の新壁造りとなっており、土壁(葺小舞)、漆喰、焼杉と自然素材にこだわっている。設計者が京都在住ということもあり、洒落たたずまいです。母屋の2階は、部分の2階が渡り廊下でつながり、新旧建物が見事に対峠していておもしろい。渡り廊下両脇に広いデッキがあり、夏のバーベキューなどが楽しめそうです。防水面で少し気になったが、須坂のまちなみには調和した作品でした。
(場々洋介)
優秀賞
Kura³夢倉座
甘利享一

【所在地 木曽郡木曽町】
この作品は木曽の伝統的な貫板工法で作られた板倉の改修プロジェクトである。周辺には同様の板倉が点在しており、それを取り囲む山々の眺望と相俟って木曽谷ならではの魅力的な風景を作り出している。クライアントは138年前に建てられた板倉を所有しており、これを倉ではなく居住空間にすることを望まれたという。ローコストに徹した工事のため、意地悪な見方をすれば材料にも、仕上げにも、ディテールにも難がないわけではないが、設計者と施工者が力を合わせて取り組んでいる健気な光景が目に浮かんで、そのひたむきな姿勢にも好感が持てた。外倒しの大きな雨戸がブリッジになり露天風呂への橋がかりになるところなど「遊び心」の成果にも賛同の拍手を送りたい。
(中村好文)

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