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長野県建築文化賞

長野県建築文化賞の目的

 長野県の建築文化の発展に寄与する優れた建築作品を広く募集し、意匠・技術面から総合的に審査し、その設計者である建築士の功績をたたえ表彰することによって、会員の創作意欲や設計活動の向上に資する。
 表彰作品及び設計者を公表し、社会に建築士の活動や建築士会の存在の理解をはかる。

平成30年 第14回 長野県建築文化賞
審査結果

【審査員】
(審査員長)岸 和郎氏(建築家 京都造形芸術大学大学院教授)
(審査員) 関 邦則氏(長野県建築士会名誉会長 (有)関建築とまち研究室)
(審査員) 場々 洋介氏(長野県建築士会会長 (株)フジ設計)

このたび長野建築文化賞の審査員長を努めさせていただきました。
今回の応募作品は一般部門15点、住宅部門19点、既存ストック活用部門5点であり、この中から2018年11月16日に行われた一次審査で一般部門5点、住宅部門5点、既存部門2点を選考し、2019年2月4日、5日の現地審査に臨みました。
雪の残る長野県の各地を巡る審査旅行だったのですが、京都に住む私にとってはほとんど詳細知識のない場所である上に同じ長野県内でも地域によって異なる気候条件やランドスケープ、さらに地域独自の文化など、長野県の環境や文化を同時に学びながらの建築作品の審査ということになりました。
審査作品は大きな商業施設や村庁舎から住宅、それに四畳半の茶室の改装までという幅広いものでした。ですから建築作品を審査するという気分ではなく、審査員がその審査眼や価値観の表明を求められている、すなわち審査されているのは審査員である我々ではないのか、という思いに何度も襲われました。
審査結果は下記のとおりですが、この賞にエントリーされた方々、現地審査に協力いただいた各作品のクライアントや関係の方々のご協力があって審査が無事に終了しましたこと、審査員一同を代表して感謝したいと思います。
以上、審査経過の報告とともに審査の総評としたいと思います。(岸和郎)

一般部門
最優秀賞(知事賞)
須坂双葉幼稚園 (須坂市墨坂)
呉屋 彦四郎

三角形の平面形状と敷地形状との関係、内部中央のホールと屋上との関係など、どこか違和感を感じながら現地を訪ねた。
中央ホールの周辺に配置されたキャットウォークを走り廻る子供達とその背の高さから決めたであろうキャットウォークの位置の低さ。その大人にとっては低すぎる設定が意外に大人にとっても心地いいこと、三角形状の建物が変形の敷地形状へ説得力を持って配置されていると感じた。
最も印象的だったのは走り廻る子供達の存在で、彼らの元気さが彼らにとってのこの建築の評価を見事に教えてくれること、また大人になる頃にはいい思い出になっているであろうと我々に確信させてもくれた。最優秀賞をもって子供達の未来を祝福したい。(岸和郎)
優秀賞
マザーバインズ長野醸造所 (上高井郡高山村高井)
吉田 満 吉田 京子 香川 翔勲

ワインの醸造施設なので当然のことかもしれないが、北信五岳や千曲川の流れをかなたに望む山の中腹の傾斜地に建っている。この場所から見渡すことのできる雄大な絶景を活かすことと、周囲の山なみの風景にマッチさせることが建築的なテーマだったのだろう。
シンプルなプログラムに対して、用途上のゾーニングと合わせて構造架構形式も整理されており、気負わずに自然体でデザインに望んでいる姿がありありと窺えるところが、とても潔く清々しい。住宅のようなスケール感を意識してデザインされた高台の展望室のような交流ゾーンがこの建築のチャームポイントになっている。(関邦則)
優秀賞
朝日村新庁舎 (東筑摩郡朝日村古見)
松橋 寿明

地域にとってエポックとなる新庁舎建設に対する地元住民の熱い期待が形になったとでも言えそうな建築で、近年の公共建築物の木造化の推進の時流を受けて、地元産の木をふんだんに使用した庁舎になっている。規模はさほど大きくないが、シンボリックなアトリウム、キール架構による無柱空間、充満した木質感などの見どころもあって、木造建築としての持ち味を発揮しており、庁舎建築としても精緻な完成度になっていると思う。中大規模木造建築においては、林業振興的な背景事情と裏腹にさまざまな規制や制約があるのが現状であるが、さらなる可能性への挑戦ステップとなる建築だと思う。(関邦則)
奨励賞
軽井沢発地市庭 (北佐久郡軽井沢町発地)
久米 勇一

南軽井沢エリアの観光振興で建設された施設です。特長は周辺の山並みや浅間山に合わせ うねりのある棟と、外周のランダムな列柱が印象的です。木造とRC造のハイブリッド建築となっています。プランは、3ブロックに分かれていて、中央にある売店切妻型天井で無柱のトラス構造となっており、開放的な空間は気持ちがいい。避暑地軽井沢の森をイメージしていると設計者は言うものの、外周のランダムで傾きのある列柱については、審査員の中でも少し評価が分かれました。仕上り材には、地域材のカラマツ板や浅間焼石などが使用されていた。(場々洋介)
奨励賞
八面大王足湯 (安曇野市穂高有明)
岡江 正

中房温泉の引き湯を利用した、安曇野市しゃくなげの湯周辺整備に伴い、新たな八面大王足湯が移築されました。周辺には、道の駅や研修施設そして最近竣工した温泉施設しゃくなげの湯があり、観光の拠点として位置づけられている。施設は、足湯と周遊バスの待合室という小規模な建築ですが、地域の伝説である八面大王の8面のモニュメントやそれぞれのオブジェを設け、神話性を大切にしていると思える。待合室は、冬期間は温泉の熱を利用して床暖房されている。安曇野の風景を観ながら足湯で温まり瞑想するには最高の場所だと思いました。(場々洋介)
住宅部門
最優秀賞(知事賞)
Shell House / もりのことば (北佐久郡軽井沢町追分)
遠野 未来

木立の中の特異な外観の鮮烈な印象もさることながら、この小さな建築から発散されてくる熱いマインドにも圧倒される。今時の流行スタイルとは無縁の独自の建築思想の中から湧き上がってくる自由で柔らかいイマジネーションに導かれて、このユニークな物体が地上に置かれることになったのだろう。ハンドメイドでなければできない有機的な曲面構成の空間は、母の胎内か動物の巣を連想させ、無限のコスモスのような拡がりさえも感じさせる。じっくりと時間をかけて建築を練り上げるということが難しい昨今の時世にあって、稀有な建築物語を体感することができた。(関邦則)
優秀賞
M4 (松本市蟻ケ崎)
猿田 仁視

松本平を眺める蟻ケ崎の高台に建設された、設計者の母弟妹三人の為の住宅と、離れ(音楽堂は弟がピアニストの為)です。東側にくの字に折れ曲がった平面で、それぞれの窓から、松本平が一望できる。反面西側はほぼ、外璧と屋根の一体的造形で、開口は道路からのガレージと玄関へのアプローチのみです。隣地が5ⅿほど低いので、座わると高層ビルからの風景と錯覚する。窓にはカーテンもなく眺望が楽しめる。おそらく夜景は素晴らしいものと想像する。離れは、音楽堂はピアノ教室にもなっているようで、横長の細い窓からも風景がつづく。まさに松本平が見渡せる贅沢な住宅であろう。(場々洋介)
優秀賞
セカンドライフ/悠々楽々舎 (北佐久郡軽井沢町長倉)
鎌田 賢太郎

セカンドライフとか終の棲家と言われる住まいは、一般的な住宅と少し違っているのかもしれない。若い世代にとっての住宅は、家事や子育てをしやすい機能的で経済的な家であることが重要であると思うが、悠々自適にスローライフを過ごしたいと考える世代にとっての住宅は、コンパクトで居心地の良い空間こそが優先されるのだろうと思う。
そうした状況や期待を真正面から受け止め、真面目に精一杯応えた秀作と言えるだろう。低めに抑えた居室のプロポーションや庭と一体化したプランは適切な回答で、住み手の立場にたった優しく丁寧な姿勢がにじみ出ているのを感じる。(関邦則)
優秀賞
力石の家 (千曲市力石)
佐藤 慶一

単純この上ない切妻の立面にシンメトリーに開けられた開口部に取り付く木製ルーバーが創り出す表情が印象的な住宅。
敷地に塀のないオープンな配置は、日頃大都市の劣悪な都市環境からどう人間を守るかという視点の設計者からすると非常に新鮮なものであった。
その単純に見えるファサードの後ろの内部空間は小さなスケールのデザインの連続でむしろ複雑な一室空間が出来上がっており、ファサードの印象を裏切る。大きな一室空間でありながらもそれを部分の集合体としてデザインしたことの結果として、魅力的な生活空間がそこに生まれていると感じた。
ディテールの試行など設計施工であることの強みを生かした建築に好感を持った。(岸和郎)
奨励賞
備えるコートハウス (松本市村井町)
吉田 満 吉田 京子

40代の若い夫婦の為の住宅は、工業団地の端にあり、また塩尻北インターの近くで中庭を中心にプランされたコートハウスです。表裏のない建物は、外周が視界的にもクローズされていて、その分逆に中庭を介して、すべてが見渡せるように各部屋が中庭に対して解放されている。平屋で階高も低く抑えられていて、中庭の木の四季の変化が楽しそうです。屋上にソーラーがのっているが、蓄電池を含め機械設備が一か所にまとめられ、格子で隠されているのは好感を持ちました。(場々洋介)
既存ストック活用部門
優秀賞
歡歸荘茶室 “也無庵” (南佐久郡南牧村海ノ口)
吉野 弘

長野県に移築されて残っている建築家白井晟一の実質的な処女作である住宅のなかにある小さな茶室の改修であるが、常識的に連想される侘び寂び茶室というわけではなく、現代的な解釈による操作性の高いデザインアレンジと遊び心によって、趣の違う空間が創造されている。写しとか見立てとかいった茶室に許される独特の手法が多用され、拘らない自在な精神で比喩的にデザインされているが、それも茶道の精神であることを思わされた。小さな空間ゆえにこだわりの集積密度も高まる。装置化して設けられた仕掛けがやや装飾的な印象なのは、いわゆる「好み」の問題であるのかもしれない。(関邦則)
優秀賞
大雪渓酒造 花紋大雪渓 (北安曇郡池田町会染)
川上 惠一

地元で有名な大雪渓の敷地内にあった、築150年以上の民家を曳家・用途変更して、事務所と売店に再生した施設です。安曇野の北アルプスの眺めがすばらしい場所ですが、国道の道路拡幅を機に土蔵と民家が新しい価値として生まれ変わったことについては、評価が高いと思います。施工についても、民家再生にたけた施工者によるもので、伝統建築の素晴らしさも感じる。事務所も売店以外に、和室が4室と格式が高いが、現在は何も使われていない。今後、色々な場面で利用されることを期待します。(場々洋介)
新人賞
一般部門 マザーバインズ長野醸造所 吉田 満  香川 翔勲

過去の審査結果

第13回 長野県建築文化賞審査結果
第12回 長野県建築文化賞審査結果
第11回 長野県建築文化賞審査結果
第10回 長野県建築文化賞審査結果